Personal History:自分史No.1

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第Ⅲ章 Priject/こと
まちづくりとは何か?地元をベースに地域資源の整理
=まちづくりと地域政策=

 地域の中で「まちづくり」とは、簡単そうだが色々な切り口があり、上手く展開しているところもあるが、意外と問題も多く活動の壁もある。そもそもまちづくりとは、まちを構成している全ての要素が対象であり、テーマは沢山存在する。また一人ではできないテーマでは、関心のある人が集まって実践的な活動をすることになるが、団塊の世代など年齢の高い層が自ずと中心となり、未来を担う若手やこどもとの接点も少ない。そんな当たり前の種々の壁を「まずやろう」と突破する人の存在から始まる。
 人が見つかったら、次はまちづくりの手法だが、「地域資源の発掘」「人的なネットワーク」「経済的な社会循環」3つが大切である。
 まずは「地域資源の発掘」であるが、自分の住んでいる地域の魅力が何で、住んでいる人が誇りに思うことは何なのか。一言で言うのは難しいし、人それぞれである。しかし、住んでいる人々が、共有する地域資源と何なのか、ワークショップで共有をすることから始まる。一つの事例に、NPO法人まちづくりプロジェクト、略して「まちプロ」を核にして、取り組んだものを少し整理し、この間幸いにも活動成果を「物語」として物質化できたものがいくらかある。
 人的なものについても、単に地域に対する想いだけでなく、企業等の階層型組織とは異なるフラットで柔軟かつ有機的なネットワーク型の活動組織が求められる。しかし、過去の「タテ社会」思考が染みついていると運営スタイルと地域活動が、必ずしも上手くシンクロナイズ出来ないことも生まれてくるのが現実でもある。
 とくに展開にあたっては、3つ目の経済的な循環でコミュニティを組み立てることのできる人とビジネスモデルの確立が重要だと考える。
 まちづくりといってもテーマは色々なものが対象であり、体力と組織的な限界も見極め、最近、私は「アート」と「食」にテーマを絞っている。アッポコ主体の地域アートとぶどう・ワイン関係ネットワークと関わりを深めている。今は、単なるイベントに留まらずまちづくりを推進する「ネットワーク型の人材」の確保や、最近特にプロジェクトの展開を保証する「経済的な社会循環」などの可能性の探究が求められている。

註①)地域でのまちプロの物質化
・まちづくり物語(2013.3.13)、物語2(2015.5.9)の制作に主導的に関与
Hot Spot in KASHIWARAシリーズ(①鉄道物語、②水仙郷物語、③河内コットン物語、④ぶどうワイン物語)を制作し、「ええトコわがまち柏原」のブランドアップを推進
・NPO法人まちづくりプロジェクト(まちプロ)の6年間の活動を清算(2016.1.5)
註②)まちづくりに関する2つの留意点
 最初はプロジェクト的には、企画・調査、次は、計画・実施段階へとステージが移る。組織的な活動が必要となると、調査・企画などと共に、実務的な活動を支援する縦型組織での経験はプラスである。しかしフラットで柔軟かつ有機的な活動組織と必ずしも協調するとは限らないのも現状である。
 圧倒的に実務能力が弱い地域の活動団体にとっては、団体活動をアドバイスやサポートする「中間支援の組織機能」が、地域活動を底上げし拡大強化するのには不可欠。
「人とネットワークvs思考回路」(行政に対する対応、過去の企業組織の運営手法から脱却、地域の組織風土の改革、が課題)
註③)過疎地の地域創成
 地域政策に関しては、①コミュニティデザイン(手法)、②ソーシャルキャピタル(実体:互報性、信頼、ネットワーク、規範)が基本であるが、孤立、無縁社会、里山など過疎化が進展する中では里山資本主義をはじめとする社会的な経済循環が必須の要素である。

第Ⅲ章 Priject/こと
現代の知の拠点づくりとは何か?
―大学の強みを発揮したプロジェクトに挑戦―

 退職前の仕事柄、研究開発や科学技術の資源を活かした実践的プロジェクトは、私にとっては取組みやすいものであり、歴史的な組織風土をもった組織=大学というフィールドに関わるプロジェクトに挑戦した。
 国立大学が手を出さない分野でグローバル拠点をつくるのが一つの戦略ということで、植物工場研究センター(PFC)の加速化を担うグリーンクロック新世代植物工場(GCN)プロジェクトの構築支援や、最先端のガン放射線治療薬の研究開発拠点=BNCT研究センターの創設支援などに関わった。その他には21世紀の重要テーマ「食」の知の拠点づくりを推進する共同大学構想への挑戦や、関西から小型人工衛星の宇宙への発信拠点などにも関わったが、こちらは結果的には成果に結びつかなかった。現代社会が求めている「競争と連携」を機軸に大胆にガバナンスを発揮するためには、組織風土の限界を突破できなかった点が大きく、自らの立ち位置が受け身での限界も痛感できたというのも良い経験だった。
 派生的に、宇宙開発や食の知の拠点に関連して、元気な若い人にも出会えたりして色々な人とのネットワークが広がり、非常に楽しい出来事だった。

第Ⅱ章 Art / たのしむ
芸術とは何か?
―探索に一歩を踏み出すー

 現代社会は、高度な科学技術や経済の発展の一方、社会不安や閉塞感が高まる時代でもある。私は、それらを打破し、社会や人生を豊かに生きる上で、一つのカギを握るものが「芸術=アート」であるのではと思う。そのため「芸術とは何か?」「人間の精神を豊かにするものなのか?」を考察したいと思っている。
 具体的には、仏教やキリスト教など庶民への普及啓蒙の道具として発展してきた絵画や壁画、貴族やブルジョアなどの特権階級の資産であった芸術作品から近年の地域パブリックアートや現代アートのように広く社会を表現しているアートの造形まで、芸術の歴史的社会的な機能を系統的に学びたい。とりわけ、平面性、修飾性の強い独自の世界を切り開いた「日本画」の内実を深めたい。これらの過程の中で、成果を個人のこれからの生き方の糧にすると共に地域や社会活動に活かしたい。アートの視点として、制作者だけでなく観者との関係や、特に喜び感動と生きる価値を与えるアートと社会との関係にも関心がある。
 卒論では、「現代における巨大壁画芸術の一考察」をテーマに、近現代の巨大壁画では、ゲルニカで有名なピカソではなく、スペインのミロが公共的な転換点だった、と結論づけた。
 アートに関しては、理論面だけでなく実践面では、地域のまちづくりの展開の一つとして地域アートに関わってきた。地域の芸術文化の振興と地域社会の発展を図る「アッポコ((Arts Project in OSAKA KASHIWARA:既存組織を発展・再構築)」のメンバーとして、地域から発信する芸術祭「柏原ビエンナーレ」を軸に地域をフィールドに活動し、地域のアートの底辺を広げる「こどもワークショップ」や地域を限定したアートイベント「はるるんフェスタ」等を組み立てながら地域とアートの実践的な関連を模索している。追伸:「アッポコ」は2020年「Anyアート」に統合された。

註④)学部論文は、近現代の巨大壁画の特質を公共性の観点から考察(2015年度卒業研究)
「現代における巨大壁画芸術の一考察:芸術面の「公共性の構造転換」はミロから始まった」
 壁画とは、古代から絵画芸術表現の柱として位置を占めてきた。近現代の巨大壁画を俯瞰的に捉える上で、壁画と公共性の関連性は、避けては通れない視点である。そのためドイツの社会学・哲学者ハーバーマスの公共性の3つの概念(①公的Official、②共通Common、③誰にでも開かれたOpen)を視点に、戦前から戦後、民主主義・国民国家、アートの変容を歴史的社会的に考察し、ピカソ≪ゲルニカ≫1937年とミロ≪太陽と月≫1957年の対比の中で、巨大壁画の公共性の構造転換は、ミロのユネスコ壁画から始まったことを論じた。
2016.3.19京都造形芸術大学芸術学部芸術学科修了:学士(芸術):通信制
概要版は右側をクリックして、ダウンロードして下さい。Miro_s.pdf